矜持の日 art space pool クルプルプロジェクト 1期 space ccul 2010.4.16–9.30

夜の会場となった「クル」。
看板などはない。以前入居していた花屋の文字がうっすら残る

1999年寛勲洞にオープンし、その後2006年に舊基洞(クギドン、구기동)に移転したart space pool(以下プル。プル 풀 は草の意。キム・スヨンの詩「草」にちなむという)は、韓国のオルタナティブスペースとしては老舗の域に入る。
そのプルが、チェ・ジョンファが代表を務め、このたびオープンすることとなった新しい文化複合スペース space ccol (クル 꿀 は蜜の意)と、今後の2年間、展示の企画・スペースのパートナーシップを結んだ。
このスペースで行われる企画や創作活動は若い作家を中心に実践され、既存の美術館やコマーシャルギャラリーでは成し得ない大衆と創作者の壁を取り払うためのものだという。

チェ・ジョンファ氏にクル開館のお知らせをいただき、4月16日のオープニングイベントにお邪魔した。

キム・サンドン「薔薇の島」

プルは以下のようにこのパートナーシップを説明している。
「プルは急速に変わり行く実験的美術を支援するために”クル”と国内企画のパートナーシップを結びます。クルは、プルの2010年シーズン開幕と同時にオープンする新生複合文化空間(代表:チェ・ジョンファ)として、バーとカフェ、レジデンスと”クルプル”(クルの実験的プロジェクトスペース)、カスムラウンジ*が相互干渉しかつ共存するひとつの有機体です。」

「今後2年間のクルプルの企画パートナーシップにより、プルは6ヵ月単位で5、6人(グループ/個人)程度の作家を招聘する”クルプルプロジェクトシリーズ”を企画します。クルプルは、作家らとプルが共同で企画運営するスペースとして場所を無償で提供しますが、別途の支援費はありません。プルと同時に、クルではクルプル1期プロジェクトとクル単体企画により4人の作家を紹介する展示が行われます。」

「矜持の日」展イメージ。

夕方はプルにて「矜持の日」と題してオープニング展とトークイベントが行われた。
プルの2010年オープニングを飾る「하하하 下下下 lowlowlowプロジェクト」ならびにクルプルプロジェクト1期のメンバー(クォン・ヨンジュ 권용주、キム・サンドン 김상돈、キム・サンジン 김상진、キム・ホンビン 김홍빈、ユン・ジウォン 윤지원、イム・チョンギュ 임정규、イ・スソン 이수성、チェ・ジョンファ 최정화、チェ・ジョンファは「하하하 下下下 プロジェクト」のみ)が談話者である。

「矜持の日」とのタイトルは、プルが創立から10年を越え、政治的、権威的な文化制度、そして市場経済体系が美術界の主権を握っているなか、それから離れた創作環境を与えるべきオルタナティブスペースが、そうでい続けているか?というその存在意義に対するプライドを捨ててはいないか?という自問自答の言葉である。

トークイベントでは、2006年舊基洞の一般住宅(1970年代の建築)をホワイトキューブ(白い壁に囲まれた美術館の展示室を表す言葉)にリノベーションしたプルの内装を剥がし、木造住宅の基礎やコンクリートの壁をむき出しにしてその美術館的要素を排除しようとした試みについて語られた。

それからサムソンリウム美術館の近い漢南洞のクルまで車で移動し、夜9時からオープニングコンサートと舞踊パフォーマンスが開始された。
美術館で体験できる現代音楽にありがちな難解な理論が盛り込まれたものではなく、往年のクラリネット奏者やサキソフォン奏者が演奏する、割と俗な感じのライブであった。
その理由は企画趣旨にある。

クルにおけるオープニングコンサート。
中央の後ろ姿がクルのディレクター、チェ・ジョンファ氏。

チェ・ジョンファはクルの設立に関して、”芸術と日常の関係の回復”というビジョンを掲げているという。バーやラウンジという日常的に人間の集まる仕掛けに視覚芸術や建築、デザイン、パフォーマンスなどを織り交ぜ、そこにいる人と芸術とが共鳴し新しいネットワークを構成することをを目指す。
これには、芸術の創作現場において、文化を生み出す生産者に必ず起きる創作活動と生計を立てるための労働の間に大きな乖離があるという問題が背景にある。その乖離を縮める、あるいは創作活動に生計を立てるための労働を誘導させる、あるいは創作活動に代替できる生計を立てるための労働とは何かを模索する必要があり、今後2年間にわたりその実験的企画を行うというのが設立趣旨である。

室内のところどころにチェ・ジョンファの作品が設置されている。

チェ・ジョンファは、「一般市民の感覚との調和、また過程が結果よりも重要であること。彼らに機会を与え、彼らに学ぶ。日常生活がすなわち今の芸術の舞台であり、戦場だ」と語っており、明確にこの場所が、非日常を提供する美術館に反するもの、反美術館であることを表明している。
(なお「近くにリウム美術館があるが、それに反抗しているという話があるが」という新聞記者の質問は「完全なる誤解」と否定している)

クルの内部は意外に暗く、まるで塹壕のようにも感じる。
細かく細くわかれた通路や部屋のあちこちに、招聘作家とチェ・ジョンファの作品たちが潜んでいる。
なおここではクル単独企画の招聘作家として、キム・ヒョングヮン 김형관、パク・ビョンチュン 박병춘、Motoe 모토、シン・ウンギョン 신은경も展示に加わっている。

ユン・ジウォン、イ・スソン「everything’s gonna be alright」
チェ・ジョンファへのオマージュだという.
イ・スソン(이수성)の作品。

チェ・ジョンファはまた、既存の文脈で評価されたり活動してこなかった一般市民や作家もここにきて活動すればいいとも言っている。
「スペースは人が来てこそ完成する。完成させるということをずっと継続していかなければならない場所だ。なので皆さんここに来て、自らが主人になってほしい」とは週刊韓国の取材に答えたときの言葉。
以降2年間で、漢南洞、舊基洞で何が起こるのかは、2年経ってもわからないかもしれない。


* カスム(=胸)はチェ・ジョンファのデザイン事務所の名称。

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