国立現代美術館清州館開館 2018.12.27

開館から2ヵ月が経つも、本館以外はまだ造成中の部分も多い清州館。


韓国最大規模の現代美術機関および施設である国立現代美術館(徳寿宮館、果川館、ソウル館)に、2018年12月27日、かつての清州煙草製造廠を577億ウォンかけてリノベーションした清州館が加わった。

収蔵庫としての役割が大きいこともあり、地上5階建、延床面積は1万9855平方メートルという巨大さである。
国立現代美術館は、同館にこの50年間収集してきた美術品をただ収蔵するだけではなく、「見える収蔵庫」としてその一部を1、3階の開放収蔵庫で一般客に観覧できるようにしたほか、企画展示室や保存修復室、教育スペースなども備えた複合的現代美術施設として運用していく。




1階と3階の見える収蔵庫には、美術館によって収集された1900年以降の韓国近現代美術作品1,300点余りと、美術館が公募制によって選出・購入した作品を公共機関や企業、海外の公共機関に貸与することで、国内の文化振興や美術市場活性化を図るシステム「アートバンク」(2005年設立)によって購入された600点の作品から一部が選ばれ展示されている(日本など海外の作品も混じる)。



ソ・ドホの「floor」。
クォン・オサン「Tree」


展示といっても、説明はタイトルと作者程度のキャプション程度で、あとは収蔵用の無機質な金属製の棚、あるいは運搬用に木で組まれた梱包に入ったままで並べられているという印象だ。
もしかしてわざと収蔵庫っぽさを演出しているのかもしれない。


また国立の美術館による収集品であるため当然だと思われるが、すでにその評価が定着した作家の、有名どころの作品がひたすら多くあるという感じだ。
展示としての目新しさは皆無だが、韓国を代表する作家とその作品を総覧したい、あるいは美術市場においてどのような作家が注目されているかを見たい人にはちょうど良いだろう。


イ・スギョン「翻訳された陶磁器」
シン・ミギョン「トランスレーション」シリーズ、「幽霊」シリーズ。
すべてが石鹸で作られた彫刻群。


3階の開放収蔵庫では、「HIGH LIGHT」と題された、アートバンク制度によって国立現代美術館に収蔵された比較的最近の作品を一堂に見せる展覧会を行なっていた。
1階の開放収蔵庫の多くが立体作品で占められていたのとバランスを取るためか、絵画やプリント写真など、平面の作品が多い。


さてここまで紹介しておきながら、今回展示として最も興味深かったのは、国立現代美術館の総収蔵品8,100点余りより中堅・若手作家15名の作品を選んだ『星を数える日:私とあなたの物語』展であろう。

キム・ウン「ギャラクシー」


他と変わらぬ収蔵品展ではあるのだが、80年代生まれの実力作家の作品が一堂に見れるとあってお得だ。
出展作家はカン・イッチュン(강익중)、キム・スジャ(김수자)、チョン・ヨンドゥ(정연두)、キム・オクソン(김옥선)、キム・サンウ(김상우)、イ・ソンミン(이선민)、ウォン・ソンウォン(원성원)、チャ・ジェミン(차재민)、チョン・ソジョン(전소정)、チェ・スアン(최수앙)、キム・ウル(김을)、ヤン・ジョンウク(양정욱)、イム・フンスン(임흥순)、コ・ジェウク(고재욱)、キム・ダウム(김다움)。

チョン・ソジョン(1982年生)の「あるミシン師の一日」。
タイトルは朴泰遠の小説「小説家仇甫氏の一日」から。日々激動的に変わっていくソウルの街なかで、ミシン糸に囲まれすぎて周りの変化に気づかなかったかのように、40年間毎日黙々とミシンのペダルを踏み続けている1人のミシン師の姿がとらえられている。
チャ・ジェミン(1986年生)「迷宮とクロマキー」。
2016年光州ビエンナーレや2014年のイルミン美術館『トータルリコール』展などで有名になった作品。電気会社非専属の電気工事業者が、街の迷路のような路地に長いケーブルをひたすら伸ばしていく。電信柱に命綱をつけて登り作業する様子が、突然合成前のクロマキー(動画の合成に用いる、ある特定の色部分を処理で透明にし、他の映像を重ねられるようにする技法のこと)画面になり、現実からかけ離れた戯曲的な作業に見えるようになる。手作業の神聖化と軽視(賃金的なものを含む)という極端な消費の仕方を、人々に見せつける。
ヤン・ジョンウク(1982年生)「疲れはいつも夢とともに」
木で作られたからくりがテオ・ヤンセンを彷彿とさせるが、雨だれのようなリズムで動くそれらが静物的であり、抽象画を見ているようでもある。
キャプションのそばには、以下のような詩が書かれてある。

彼はいつのまにかまどろんでいた
学生になり、会社員になり、家長になっても
彼はまだ目を覚まさなかった

彼は朝目覚めるとき夢を見た
一等になる夢、上長になる夢
広い家で家族と笑うといった夢

彼は今まどろみながら似た夢を見る
おそらくその夢は朝見た夢と
同じではないか?

彼は頭を揺らしながらまどろむ
一瞬がくりと頭を垂れつつ夢を見る
彼はいつからか夢を見ていた

本展における新作は、コ・ジェウク(고재욱)の「頂上に立った男」と、キム・ダウムの「番人たち」の2つのみである。

「頂上に立った男」は約15分の映像作品で、1977年、韓国人で初めてエベレスト登頂を果たした登山家の高相敦(고상돈)について扱われている。
済州島に生まれた高は、清州大学校に進学し、そこで登山の訓練を受ける。
大学中退後はまさにこの清州館の前身である清州煙草製造廠に勤務しながら、社内の登山クラブや大韓山岳同盟会に所属し、登山を続けていた。
1977年9月15日にエベレスト登頂に成功、朴正煕大統領から勲章(体育勲章青龍章)を与えられたのをはじめ、国民たち、そしてもちろん煙草製造廠の職員らに、彼の帰国は熱狂的に迎えられた。


しかし英雄としての生活は長く続かない。
アメリカアラスカのデナリに登頂後、下山中の1979年5月29日雪崩に逢い、1,000メートル下に落下し、死亡した。


本作はその出来事と、1946年の京城専売局清州煙草工場設立から、1987年の韓国煙草専売公社(KT&G)への改編を経て2004年の完全閉鎖、2015年の清州工芸ビエンナーレへの再活用、そして現代に至るまでの煙草製造廠の歴史とを、当時工場で働いていた人を中心にインタビューする映像と当時の記録映像でまとめている……のだが、どうにもお役所っぽい雰囲気が抜けない。

作家は、別れた恋人の残していった品物を展示場に並べて、参加者の希望に応じる形で1つ1つ処分していくパフォーマンスや、独りカラオケ部屋を作るなど、若者の鬱屈とした感情を表現しがちなのだが、本作品は行政や企業のプロモーションビデオばかり作っている映像会社が作ったかのようなくそまじめな作り方がされており、何かそこに意図があるのではないかと思わせたが、そこを読み解くことができないまま、作品はドラマチックなドキュメンタリーのようなムードを匂わせて終わる。


ただし、イム・スンフンの優れたドキュメンタリー「危路工団」(ソウルの平和市場でかつて低賃金長時間労働を強制されていた紡績・縫製工場の女性らを多く取材した)も展示されているため、本展が決して産業発展のポジティブな目だけを向けていないということは付け加えておこう。

イム・スンフン「危路工団」
キム・ダウン(1983年生)「番人たち」 動画リンク

キム・ダウンの「番人たち」では、リノベーション途中の清州煙草製造廠のパーツを映像で切り取りながら、その建築的、あるいはデザイン的奇特性・長所を叙情的に表現している。


保存修復室ではどのように作品が保存修復されていくか、その過程を説明するパネルのほか、大きなガラス張りとなった修復室が並び、やや動物園のようではあるものの、研究員やスタッフらが収蔵品の保存作業を見ることができるようになっている。

今後も同じように、収蔵品を組み合わせることで企画展を続けていくのか外からはわからないが、一度行ってみるにはいいかもしれない。

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