『脱俗のコメディ Divine Comedy(神曲)』パク・イソ遺作展 ロダンギャラリー 2006.03.10-05.14

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2004年釜山ビエンナーレで展示された遺作『我々は幸福だ』のビルボード。
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2004年4月、出展予定の釜山ビエンナーレを目前に、アトリエで心臓麻痺により急死したパク・イソ。
韓国におけるパフォーマンス・アートやコンセプチュアル・アートにおける先駆者である。
椅子に座ったままの姿で亡くなっているのを発見された彼の2周忌にあたる今年、作家の親しい友人であったイ・ヨンチョル桂園造形芸術大学教授の企画で、47歳という短い生涯とその20年にわたるアートワークをまとめた遺作展『脱俗のコメディ Divine Comedy』がロダンギャラリーにて開催された。

『脱俗のコメディ』とは、ダンテの『神曲』の英題『Divine Comedy』を訳したものである。
美術館の企画意図には、以下のように書いてある。
“本展を企画した客員キュレーターのイ・ヨンチョル教授(桂園造形芸術大学)は、生前作家の極めて親しい友人、かつ同僚として、企画コンセプトを叙事詩の代表的存在であるダンテの『神曲(Divine Comedy)』に求めている。ダンテの肉体と霊魂の「巡礼行為」と、パク・イソとの精神的な逢瀬を試みるものである。 パク・イソの20年にわたる芸術行為は、世の相対的価値観に埋没することなく、かつ内在と超越を同時に追求するという巡礼の性格が強かった。「脱俗のコメディ」という企画コンセプトは、生の二面性に対して関心を強く持ち続けてきた作家の、幅の広い発想と遊びの感覚、特有のスタイルに合う器として設定したものである。世界の躍動性、生の不条理、悲劇、知ることのできなさ、意向の通じない偶然性、わびしさのただ中で、微動だにせず沈黙したままの『考える人』は、近代以降の知性人と芸術家を表したものとしては代表的なものである。この『考える人』は、1969年に現代美術家たちの概念主義的な作品を、生に対する問いと結合させた展示 『態度が形式になったとき』の副題にあった「汝の考えのうちに生きよ(live in your head)」を実践する者でもある。 20年に及ぶパク・イソの多様なアートワークが、われわれに投げかけられたもっとも大きな問いは、考える者としての「態度」が本物であるか、ということへの問いであろう。”
(サムソンミュージアムプラトー〔閉館済み〕ホームページのログから抜粋して翻訳)

パク・イソの突然の死は、韓国の現代美術界において大きな衝撃であった。
2003年のヴェネチア・ビエンナーレに出展するなど、海外での評価や知名度も確実なものにしていた作家である。
彼の急死に衝撃を受けながらも、2004年の釜山ビエンナーレは彼のインスタレーションプランを入手し、オレンジ色のベースに白い文字で『われわれは幸福だ』と大書された看板状の作品を作り起こし、展示した。
また『地平を越えて』展(2004年、トータル美術館)は2004年釜山ビエンナーレ参加作家が主となって展示を行ったのだが、これは実質的なパク・イソの追悼展であった。
また、この『脱俗のコメディ』展は今年の釜山ビエンナーレ開催に時期を合わせて企画されたものであろう。韓国のアートシーンにとっては、彼のいない世界で準備する初めてのビエンナーレとなる。

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インスタレーション『あなたの明るい未来』

パク・イソ(朴異素)は本名をパク・チョルホといい、1957年釜山で生まれた。
弘益大学を卒業後、1982年に渡米、アートインスティテュートに通った。1985年にはニューヨークに「Minor Injury」というアートスペースを構え、運営するようになる。ここはノンメジャーの作家や、韓国のように先進国ではない国からニューヨークにやってきた作家のためのオルタナティブ・スペースであった。
このころ彼はパク・モ(朴某)と名乗り、「ある韓国人」という匿名性を持ったアーティストとして自分を位置づけ、パフォーマンス・アート、コンセプチュアル・アートにとどまらず、アート情報誌や新聞への寄稿など、その活動を幅広くした。

1995年に韓国に帰国、多くの企画展や国際展、アートインレジデンスに参加した。また翻訳活動をすることで、海外の最新のアートシーンの動向や哲学を、精力的に韓国内に伝えた。
ただ、帰国後の彼の作品には内向的な雰囲気がただよっている。
10年にわたる海外生活で澱のように彼の内面に重なった疲れが、彼の重要視する芸術的思考をそのようにさせたのかもしれない。人間の無力さ、無目的さ、ナンセンスアート等を多く表現するようになる。

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インスタレーション『Fallayavada』

本展は、彼のニューヨーク時代の新聞記事やパフォーマンスの映像から始まり、ヴェネチアビエンナーレに出展した作品『2010年世界で一番高い建築物 10選』、水に浮かぶことのできないコンクリートと鉄骨でできた舟の作品『後を振り返るな』、そして突き当たりの最後の部屋には遺作である『今日』が展示されている。

20年という短い作家活動の中から、彼自身の哀愁、そして世界の中の韓国現代美術の軌跡と位置を知ることのできる展覧会である。


写真を提供くださったロダンギャラリーに感謝いたします。

展覧会原題:탈속의 코미디_박이소 유작전
2018.11.11.再編集

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