宮島達男『Trandcend Section(境界を越えて)』 設置ワークショップ & レセプション サムソン・リウム美術館 2005.02.27, 03.01.

2004年10月に開館したサムソン・リウム美術館
南山の麓、漢江鎮(ハンガンジン)の高級住宅街の中に位置し、三星(サムソン)文化財団が管理するサムソン電子・李健煕(イ・ゴニ)会長のプライベートコレクションを展示している。

収蔵作品や展示方法のレベルの高さは、韓国内の私立美術館の追随を許さない。
展示される古美術は、その多くが国宝・重要文化財級であり、現代美術はジャコメッティやフランシス・ベーコン、マシュー・バーニー、サム・テイラー・ウッド、ゲルハルト・リヒター、ヨーゼフ・ボイス、ナムジュン・パイク、イ・ブル、李仲燮(이중섭 イ・ジュンソプ)、金煥基(김환기 キム・ファンギ)など、枚挙に暇がないほど、国内外の重要作家を取り揃えている。

また建築設計は、古美術を展示する「Museum 1」をマリオ・ボッタ、現代美術を展示する「Museum 2」をジャン・ヌーヴェル、子供向けの芸術教育イベントや展覧会、解説を行う「児童教育文化センター」をレム・コールハースと、世界のトップに立つ建築家が担当している。

さらに、これほどの作品群を観客らに対して制限線を引くこともなしに見せていること好ましいし、レプリカや本物の作品を用い、子どもたちに芸術のおもしろさや作品に込められた意味を知ってもらう「児童教育文化センター」の取り組みは、楽しいアイディアに溢れている。
ソフト・ハード両面で充実した本館は、入場が完全予約制のため制限されていることもあって、現在2ヵ月待ちだとも聞く。

サムソン・リウム美術館。後ろはハイアットホテル。建物は左から児童教育文化センター、Museum 1(茶色の建物全体)、Museum 2。


そのリウムに、宮島達男の新作「Trandcend Section(境界を越えて)」が、内外2ヵ所にある、美術館へのアプローチに永久設置された。
2004年開催の光州ビエンナーレに「Time River」が出展されたのを見ると、宮島達男と韓国美術界の親密度が増したといえそうだ。

「Trandcend Section」は、宮島達男作品でおなじみのメディウムである発光ダイオードがランダムに1から9の数字を示すカウンターガジェットを用いた作品で、人間の生命とその無限の可能性がテーマに込められている。
「Mega Death」(1999)などと同様のテーマであるが、作家は特に韓国で展示される作品には「分断」のイメージが含まれており、人間は分断という困難を越えることができると暗示している。

作家はこれまでも、直島の「Sea of time」や埼玉県立近代美術館の「Number of Time in Coin-Locker」においても一般市民を対象に公募を行い、カウンターガジェットの切り替えスピードを設定するワークショップを行ってきた。

作家によるレクチャー。

まず、当選者ににそれぞれカウンターガジェットのスピードを調節してもらうワークショップが、2月27日に開かれた。
宮島達男本人から作品のコンセプトなど説明されたあと、参加市民はカウンターガジェットのスピード調節に入る。
宮島はレクチャーの最後に、
「そのひとつひとつが作品であり、あなたはアーティストである」
「あなたがスピードを決めた数字は、永久に動き続ける」
と念を押した。

ワークショップ会場となったロビーには、設置前のガジェットが並べられている。市民はそれぞれ割り当てられたガジェットの速さをどうしようかと悩みながらも決めていった

この作品は館内に収蔵されるわけではなく、一部は美術館の外にある舗道にも設置されるため、半ばパブリックアートのようなものである。
作家の名がついたパブリックアートに一般市民が参加するということは、今まであまり試みられなかったことで、なかなか興味深い。
今後このワークショップと本作品を来館者へ伝える方法を、美術館側がどのようにとっていくのかは不明だが、少なくとも参加者は作品に親密さをもつだろう。

永遠に残ると言われて、市民たちはどのように思いながら設定しただろうか。
宮島によると、今回韓国人である参加者らが設定したスピードは、日本人が設定するものよりも、少しスピードが速いそうだ。

参加者らによってスピードが設定されたカウンターガジェットは、美術館のエントランスや舗道に設置された後、あらためて3月1日にワークショップ参加者や韓国の美術関係者等が招待され、盛大に完成レセプションが行われた。
南山の緑をイメージして選ばれたというエメラルドグリーンの光は、近くを流れる漢江(ハンガン)や、分断の象徴・臨津江(イムジンガン)をも思わせる。

撮影許可をくださったサムソン・リウム美術館、記事掲載を許可くださった宮島達男氏に感謝いたします。

2019.6.16.再編集

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