Media_city Seoul 2004(第3回ソウル国際メディアアートビエンナーレ)ソウル市立美術館 2004.12.15-2005.2.6

本展のイメージがデザインされたパンフレット。
オープニングで上映されたウォルフ・ヘルツゥレ(Wolf Nkole Helzle)の『…and I am a part』。市立美術館を訪れた人びとの顔が、流れるように別人に変化していく。

Media city Seoul』は、韓国における大規模・代表的な現代美術国際展のひとつである。
これまでも毎回ソウル市立美術館で開かれているが、メディアアートに特化されているのは、ソウル特別市がIT都市(e-Seoul)を標榜していること、また光州や釜山といった地方都市の各ビエンナーレとの差別化をはかり、首都機能をもつ都市として新進的なイメージを押し出す意味もあるだろう。

これまでは2000年に「都市:0と1の間」というテーマで第1回、2002年に「月光の流れ」をテーマで第2回が行われている。

今回のテーマは「digital HomoLudens-GAME/PLAY」。
「HomoLudens」とは、ヨハン・ホイジンガが1938年出版の著書で「”遊び”をする人間」という概念として定義づけた言葉である。
人生はゲームであり、人間社会は巨大なゲーム場である、という「ゲーム」の概念を大きく広げたうえで、デジタル化社会に生きる私たちの表象を切り取って例示する狙いがある。

総監督はユン・ジンソプ(윤진섭、美術評論家/湖南大学校教授)、キュレーターはヨハン・パイナッぺル(Johan Pijnappel、オランダの美術史家/キュレーター)、リズ・ヒューズ(Liz Hughes、オーストラリアのキュレーター)、ハンス・D・クリスト/ティルマン・バウムゲルテル(Hans D. Christ/Tilman Baumgärtel、ドイツのキュレーターl)である。

展示されている42作品の中には、ゲーム形態やゲームをテーマにした作品ももちろん多くあるが、狭義のゲームにこだわらず、映像やウェブアート、体で感じるメディアファニチャーなど多様な作品がそろっている。


外国人作家

「森の映画館」ヤノベケンジ

日本のヤノベケンジは「森の映画館」を出展。
ガイガーカウンター搭載の「アトムスーツ」を装着したバーコード頭の人形・トらやんの後ろに、小さな小屋が建てられている。そこには子供しか入れない。

中では映画が上映されている。
映画には冷戦下のアメリカで核攻撃を受けた場合に取るべき行動について、子供の教育用に作られたアニメーション「Duck & Cover」(つまり、かがんで頭をカバーせよと教えている。日本の、あるいは現代の私たちは、核攻撃による熱線、熱風、放射線にそれだけで太刀打ちできないことは十分にわかっている)を引用しながら、腹話術人形を手にした作家の父親が孫へ、核戦争になったあとにも生き残って欲しいというメッセージを送っている。

作家自身は「技術は世界を滅ぼすかもしれないという、その危険性を人びとに伝えている」と語っており、歴史に学ぶべき教訓や人類がもってしまった巨大な力の愚かさを感じることができる。

ちなみに今回のソウル滞在で「ソウルのトらやん」を主題にしたドキュメンタリーも撮影されたとのことである。


日本からは他に神里亜樹雄、柴田知司、真下武久(「Moony」)、古郷卓司の*Candy factory Project(「Audiences」)が参加している。

「Moony」神里亜樹雄、柴田知司、真下武久
装置から霧が上がり、そこに舞う蝶が映し出される。
(出典:http://mashimolab.com)
「Audiences」*Candy factory Project
(出典:http://artonline.jp/)

「狙撃手」ベアテ・ガイスラー、オリバー・ザン
(Beate Geissler and Oliver Sann)
シューティングゲームをする人びとの肖像を撮った映像作品。
ゲーム画面の中では激しい戦闘が繰り広げられているはずなおに、大部分は無表情で視点が1ヵ所(ゲーム画面)に固まっており無気味。
(出典:https://saint-lucy.com/homepage/geissler-sann/)

2001年、東京オペラシティーでの『わたしの家はあなたの家、あなたの家はわたしの家』展にも参加した中国のワン・ジャンウェイ(汪建偉)は、典型的な戦争映画と文化大革命を扱った現代オペラといった、おそらく1970年代くらいの中国の共産主義プロパガンダ映像を交互にひたすら流す「記念式」という作品で参加している。
作家は子供のころ、それ以外に選択肢がなかったために、こういった映像を繰り返し見ていたという。
個人的体験にもとづく、イメージとコードの刷り込みについて告発している。

ツァボリック・キスパル(Szabolcs KissPál)の映像インスタレーション「Edging」。
(出典:https://iscp-nyc.org/resident/szabolcs-kisspal)
大空を羽ばたく鳥のピンボール。スクリーンの端に鳥影が到達すると、別方向に跳ね返るように別映像へとカットが入れ替わる。ビデオアーカイブはこちら
ベアト・ブローゲル、フィリップ・ジンマーマン『onewordmovie』

ベアト・ブローゲル、フィリップ・ジンマーマン(Beat Brogle & Philippe Zimmermann)の「onewordmovie」は、インタラクティブ(双方向性を有する)のウェブ作品である。
観客がキーボードで呼び出したいイメージを指す言語を打ち込むと、世界中のウェブ上からイメージを探し出して表示してくれる。
そのイメージは2つ以上見つかった時点から表示され、それがチカチカとものすごいスピードで交互に映し出される。時間が経つにつれて検索されたイメージの数は増大していく。
子どもが見たらてんかんを起こすのではないかと心配するが、それ以前に何を検索しても絶対にポルノイメージが検出される(圧倒的に無修正のものが多い)。
ウェブ世界の性向がおのずと分かる。

「OMO」は、ヤン-ピーター.E. R. ソンタグ(Jan-Peter E.R. Sonntag)のメディア・ファニチャー。
座ると、心臓の鼓動のような音と衝撃を受ける。
「Beauty Kit」PLEIX

パリを中心に活動するPLEIXは、消費社会において大企業が大物量・大規模で押し進める事業と肉体的・性的快感とが似通っていることをコミカルに指摘した『Plaid: Itsu』と、豊胸手術をはじめとした整形手術を少女むけの「お化粧セット」のようなおもちゃに仕立てた『Beauty Kit』を出展。
見た目はグラフィカルでリズム感もあり楽しいが、内容は相当皮肉が込められている。

「オサマ・ビン・ラディンの家」Langlands & Bell
(出典:http://www.langlandsandbell.com/portfolio-item/the-house-of-osama-bin-laden-stills-2003/)

イギリスの作家・ラングランズ&ベル(Langlands & Bell)の『オサマ・ビン・ラディンの家』は、インタラクティブ・インスタレーション。
レバーを動かすと、アフガニスタンの首都カブールにある殺人犯の処刑所や駐アフガニスタン米空軍基地、ジャララバードにあるオサマ・ビン・ラディンの昔住んでいた家の内部などを、映像で見ることができる。

その他、ソウルにちなんだゲーム作品やウェブアートなどの新作を出展している複数の作家(「e-ソウル」「ソウル:killing time」など、直球なタイトルも)を含め、今回見ることのできる作品は、いずれも現代社会、そして韓国が内包する問題を扱ったものとなっている。




韓国人作家

韓国からは、パク・ジュンボム(박준범)、キム・キラ(김기라)、チョン・ドンアム(정동암)、チョン・ムニョル(정문열)、ムン・ギョンウォン(문경원)、イ・セジョン(이세정)、ホン・ソンダム(홍성담)、チャン・ヨンへ・へヴィーインダストリーズ(장영혜중공업)*が参加している。

「25Acrophobia」パク・ジュンボム
(出典:http://www.galleryhyundai.com)

パク・ジュンボムの「25Acrophobia」は、半分に切られた卓球台の奥にスクリーンが立てられて投影されているビデオインスタレーションである。
卓球台には白いビービー弾が撒かれており、その先には夜のバスケットボールのコートが映されていて、どこか高い位置からバスケットボールがひたすら投げられる。
映像のなかのバスケットボールが強くライトに照らされて白く光っているために、そして遠近法のために、卓球台の上に散らばる実像のビービー弾とまったく同じように見える。またバスケットコートは卓球台の残り半分に見える。

私たちの視覚による錯覚から現実にはあり得ないつながりを見せてくれる作品である。

「0.000km Zero Sum Game」キム・キラ
入り口部分。

そして日本など海外にも数多く出展しているキム・キラの「0.000km Zero Sum Game」は、観客がゴーグルを装着するとビルからの飛び下り自殺を体験できるバーチャルリアリティーの作品である。
「自殺は、人生というゲームから脱落した者が選ぶ道のひとつである」という深刻な事実を、ユーモアでひねっている。


イ・セジョンは、毎年サムジースペースで恒例の展覧会として開かれている『Open Studio』展に、去年Sasa(44)やイ・ヒョング、ハム・ジン、Flying cityら今注目の作家たちと共に出展した作家である。
「人の顔は、その人そのものではない」という考えから発想される作品を作っているのだが、今回出展したのは旧作の「顔」というパフォーマンスビデオである。
自分の頭に半透明のビニール袋をかぶせ、その上からマジックで自分の目、鼻、口と、自分の顔のパーツをなぞっていく。
顔を描き終えると、突然口を開け、ズボッと口の中にビニールを吸い込み、たちまち全部食べてしまう。


他にはチャン・ヨンへ・へヴィー・インダストリーズが、おなじみのWebアニメーション「0PERATI0N NUK0REA」(韓国語/英語)を、チョン・ドンアムとチョン・ムニョルが「アンディーの夢」(シューティングゲーム作品)を、ムン・キョンウォンが「ちょっと私を見て」(メディアインスタレーション)を、ホン・ソンダムが「1999-脱獄」(ビデオインスタレーション)を出展している。



また、この時期の国際展としては、2004年11月24日ー2005年1月23日、国立現代美術館で『YOUNG ARTISTS from KOREA, CHINA, and JAPAN 若き模索2004』展が開かれている。
韓国からはクォン・オサン(권오산)、パク・へソン(朴惠聖、박헤성)、ヤンアチ(양아치)、イ・ヒョング(이형구)、チョスプ(조습)、チョン・ソンミョン(천성명)、ファン・へソン(황혜선)。
中国からはフォン・ツォンジー(俸正杰)、ホン・ハオ(洪浩)、ホン・レイ(洪磊)、シン・ダンウェン(邢丹文)、ウェイ・ドン(魏東)、ツァオ・バンディ(趙半狄)、ワン・チンソン(王慶松)。
日本からは、ヤノベケンジ、中村哲也、川島秀明、ムラギしマナヴ、クワクボリョウタが出展している。

イ・ヒョングAltering Facial Features with Pink-H1

写真の掲載を許可くださったMedia_city Seoul事務局と、ヤノベケンジ氏に感謝いたします。

展覧会原題:제3회 서울국제미디어아트비엔날레-미디어시티-서울-2004
2019.6.23.改変

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