
©️Kim Hyun-ho

©️Kim Hyun-ho
ギャラリーの多く集まる鍾路(チョンノ)・仁寺洞(インサドン)にあるGallery ARTSIDE。
比較的絵画の展示が多いギャラリーだが、今回は音響装置によるインスタレーションを展示する。
キム・ヒョノ(金賢鎬)は、釜山の東亜大学校、同大学院でそれぞれ美術を専攻したのち、日本の多摩美術大学大学院へ留学、センサーや音響メディアを活用したインスタレーションを制作している。
現在は東亜大学校美術大学彫塑科の教授を務め、グループ展や国際交流展は多数、主に釜山や東京で個展を開き、ソウルでの個展はこれが初めてとなる。
展示されているのは、”Sam Sara(Metempsychosis)”(Sam Sara=無常、Metempsychosis=輪廻)と名づけられた一連の作品群である。
作品名からも分かるように、仏教的イメージの色濃い作品である。
これは作家が日本に留学していた時期に取り組んでいたテーマとのことで、3階建ての本ギャラリーの各階に、「音響装置自体が音響を発生する作品」「観覧者が触れるなど刺激を与えることで音響を発する作品」「観覧者が空間に入っていき、自らが音を出す作品」という3種の構成を行っている。
そのうち「音響装置自体が音響を発生する作品」は、鉄で作られた長方形の函が4つ組み合わされている(写真上)。
その中からブォーン、という倍音が起こり、青色のネオンが点滅する(写真下)。
音の大きさやネオンの点滅速度は函によって微妙に違い、音の振動で、函の上に満たされた水が波紋を描く。


また「観覧者が触れるなど刺激を与えることで音響を発する作品」では、手を近づけるとスクラッチのような音が響き、手をかざしている部分の直下にある円形の盆に満たされた水が振動で波紋を描くものがあった。
大きい音になると水の波立ちが激しくなり、水が飛び散る。
それが自分の手の下で起こるため、何か特別なパワーを持って、この現象を起こしているような錯覚すらする。

他には、近づくとセンサーが働いて破裂音のような音がなる函、台の上に乗るとセンサーが働き、自分の周りを下から上へ、円状のレーンをカメラがめぐり、プロジェクターで自分の姿が映し出されるものなど(展覧会パンフレットの写真では、座禅を組んでいた)。

また最後の「観覧者が空間に入っていき、自らが音を出す作品」では、3階のギャラリースペースにただ玉石が敷きつめられているだけの作品が印象的だった。
スペースに入ると、玉石を踏むジャリ、という音だけ響く。
観客の動作によって発した自然音を観客自身が聞くというような試みは他の形であったような記憶がおぼろげにあるが(注:おそらくドイツのベルリン・ユダヤ博物館にある、人の顔の鉄板が数多く敷かれたヴォイドのスペース)、この場合、他の音響装置とメディアの性質が相反していてより刺激的に感じた。
裸足で踏めたならもっと良かったかもしれない。
作品の撮影・掲載を許可してくださった金賢鎬氏に、心より感謝いたします。
展覧会原題:사운드 오브제(Sound Object) :김현호展
2019.04.01.改変