
ロダンギャラリー*1はサムソン財団が経営する韓国の代表的美術館のひとつ。
2003年夏に開かれた『YES オノ・ヨーコ』展の会場となり、海外の巡回展も開催できるプライベートミュージアムとして、国内外にさらにその名を知らしめた場所だ。
2003年は韓国・ドイツ修好120年の節目であったが、本年も韓国におけるドイツ作家の展覧会が多くなっている。本展もドイツ対外文化交流研究所(ifa:Institut für Auslandsbeziehungen)とドイツ文化院が合同で開催する世界巡回展で、全作品をドイツから招聘している。
韓国からドイツへの移民も多く、芸術でもナムジュン・パイクが渡独してフルクサスの運動にかかわったり、ドイツ留学を経験した美術家も少なくなく、両国の関係は長く深い。

セリフのない現代劇なども一般的となった現代演劇では、視覚的効果や舞台美術の役割がなおいっそう重要となっている。
本展は演出家・キュレーターのヴォルフガング・ストルフが企画したもので、1997年から巡業演劇のようなスタイルで世界中を回っている展覧会だ(2008年まで継続予定)。
1960年代のフルクサスにおいてナムジュン・パイクとともにビデオアートの制作を始めたヴォルフ・フォステル、中国出身でドイツに移住した女性作家のチン・ユーフェンなど、ベルリンを中心に活動する19名の有名作家が参加し、各自が舞台や演劇、そして演劇性について読み解き、インスピレーションを得て、写真、絵画、彫刻、インスタレーション、音響、映像など多様な媒体を通して作品に作り上げた展示となっている。
参加作家は以下の通り。
クラウス・フォン・ブルッフ、カール・フリードリッヒ・クラウス、ヘルトヴィッヒ・エバースバッハ、ヨヘン・ゲルツ、レイナー・グロス、マグダレーナ・ジェテロバ、ハンス・ペーター・クーン、レイモンド・クンマー、マルク・リンメル、オラーフ・バッツェル、ヘルマン・ビッツ、カール=ハインツ・シェーファー. トーマス・シュッテ、カタリナ・ジベローケル. ギュンター・ユッカー(3月にギャラリー現代でも個展を開催)、ヴォルフ・フォステル、ウデ・バイス・レダ、キン・ユーフェン。

入り口を入ってすぐに目を引くのは、ビルボードの写真にも写っているチン・ユーフェン(Qin Yufen)の『The legend of colour』。
黄色と紺色のマオカラーの服を着た首のない人形が、20体ぶらさげられている。高さは4メートルほどか。下半身が異常に長く、よく聞くと、その白いスカートの中から、鳥の鳴き声やギシギシという音、京劇の音楽などが聞こえる。
これは作家の子供のころや青春時代の追憶から呼び起こされる音らしい。
本当の森、そしてマオカラーの服を着た大人たちの森の中を駆け回っていた子供の頃の記憶と現在の感覚とのずれを表現している。






この時期に開催されていた、ドイツ作家の展覧会を他にもいくつか紹介する。
Götz Diergartenはデュッセルドルフ芸術アカデミーにおいて、ベルント・ベッヒャーのもとで写真を学び(卒業学科はファインアート)、フランクフルトで活動している写真家であり、トーマス・ルフやアンドレアス・グルスキーの下の世代の代表的作家ということである。
デュッセルドルフ芸術アカデミー卒業後はチューリッヒでデザインを勉強したということだが、そうしたセンスも感じさせる。
卒業後はヨーロッパ各地を周り、家やガラス窓を撮ってきた。
今回は『Gouville』と『Ravenoville series』という、フランス北部の海岸地域にあるサマーハウス、いわゆる海の家を訥々と写したシリーズを展示。

浜辺に建てられたサマーハウスはどれもある程度規格化されており、そのコンパクトさがスヌーピーの家やおもちゃのように見える。
しかしおそらく夏には爛漫たる日差しを浴びるだろうヴァケーションハウスの上にある空はすべて白く濁っていて、非常に透明感のあふれた写真ながら、ぼんやりとした孤独、虚無を呼び起こす、打ち捨てられたような、夏のざわめきが過去の夢であったような、なんともいえない雰囲気をかもし出す。
またアートソンジェセンターでは、『Tobias Rehberger展』(2004.06.06–08.08)が開催されている。
会場には、越後妻有アートトリエンナーレ2003にも出展したトビアス・レーベルガーの、70年代調のポップな色彩やデザインを生かした作品がずらりと並ぶ。
本展のための新作『Sleeping Room Cabinet』と『Children’s Room Cabinet』のキャビネットシリーズ(合わせて10作品)では、プラスチックで作られた大きな箱の中からTVの音やナット・キング・コールの『Quizas, Quizas, Quizas』などの音楽がランダムに流れる。


また、2003年のヴェニス・ビエンナーレに出品された『7 Ends of the World』という作品では、丸いガラスシェードのランプが色とりどりに吊り下げられている。
これは「世界が終わった時に存在することのできる7つの場所の光」を示すもので、ランプの色がその場所を表しているらしいのだが、なぜか京都のバーガーキングが含まれていた。
最近は海外有名作家の展覧会が多く開かれるようになった。
代表的なものを挙げれば、金英燮写真画廊の『ユージェーヌ・アジェ』展(6.5−8.5)、朝鮮日報美術館の『ヘルムート・ニュートン』展(7.7−8.22)、また忠清南道天安(チョナン)市のARARIO GALLERYでは『トーマス・ルフ』展(5.28−8.22)と『シンディ・シャーマン&ヴァネッサ・ビークラフト』展(9.1−11.21)が、ソウル市立美術館では『シャガール』展(7.15−10.15)が開かれている。
展覧会原題:THE SCENIC EYE – 무대를 보는 눈 독일현대작가전
2019.01.06 改変
後注:
*1:サムソン美術館プラトーに改編後、2016年閉館。
*2:同展の、2006年インド・デリーでの巡回展のようすはこちらのサイトで見ることができる。